新たな不妊治療「最新の不妊検査・治療を導入」
最新の検査・治療を導入
不妊治療は日々進化しています。このため当院では最新の不妊検査・治療を導入し、常に患者様の治療に少しでもお役に立てるよう努めております。
※新たな不妊治療に関してはホームページおよび当院ブログにてお知らせしておりますのでご覧下さい。
タイムラプス培養
タイムラプス培養とは
胚を培養器から取り出さずに培養や観察が可能な方法で、当院でもこの培養器を導入しております。(EmbryoScope 8 time-lapse system ヴィトロライフ社製)
タイムラプス培養のメリット
メリットその①:胚に優しい環境で培養が可能
胚を培養器外で観察しないため、胚にストレスをかけない=胚に優しい環境での培養が可能になります。この結果タイムラプス培養が妊娠率上昇などにつながったという報告が多くされています。
メリットその②:胚の評価を細かくできる
胚を継続的にモニターするため、胚の優劣などの評価が詳細に可能になります。これにより妊娠率の向上が期待できる高品質な胚を選択できます。
費用
25,000円(税別) 先進医療承認済
PICSI(ヒアルロン酸成熟精子選別法)
PICSIとは
PICSI(physiological, hyaluronan-selected intracytoplasmic sperm injection)は成熟精子がヒアルロン酸に結合できるという性質を利用して、成熟した精子を選んで顕微授精(ICSI)する方法です。
PICSIのメリットは
成熟した精子は染色体異数性(=染色体の数に異常がある)のある割合が少なく、精子DNAの損傷の割合が少ないことが分かっています。こういった精子を使用すると受精率・良好胚獲得率・妊娠率が上昇し、流産率が低下したと報告されています。
当院でのPICSI
当院ではSpermSlow™という製品を使用していますが、「Zymot スパームセパレーター」とは精子にダメージを与えないで運動精子を回収するデバイスも併用しております。
費用
25,000円(税別) 先進医療承認済、スパームセパレーター費用込
Piezo-ICSI
Piezo-ICSIとは
顕微授精(ICSI)には従来法と、卵子に優しいと言われるPiezo法の2種類があります。
当院ではこのPiezo-ICSIを導入しております。
Piezo-ICSIのメリット
精子を卵子に注入する針のことを「インジェクションピペット」と言いますが、Piezo-ICSIのピペットは従来法のものと異なり先端が平坦で卵子にやさしい構造になっています。このためPiezo法は「卵子にやさしい顕微授精」であるとされ、従来法に比べて受精率、胚盤胞到達率、変性率などが好成績であると報告されています。
費用
通常の顕微授精費用に含まれております。(別途費用なし)
慢性子宮内膜炎検査について
慢性子宮内膜炎とは
反復着床障害(体外受精であれば良好胚を3周期以上移植しても妊娠が成立していない状態)の原因のひとつとして慢性子宮内膜炎があります。
慢性子宮内膜炎の原因として流産手術、クラミジア感染、分娩後の胎盤遺残、子宮内膜ポリープや粘膜下筋腫などがあるとされます。しかしこれらの原因にあてはまらない場合も発症されるとされ、かつ自覚症状に乏しいため患者様ご自身では気付いていない例も多いとされます。
検査方法
慢性子宮内膜炎の検査方法として①子宮鏡検査 ②子宮内膜組織検査の2つがあります。
①子宮鏡検査
子宮鏡検査とは子宮内をファイバーなどで観察する方法ですが、慢性子宮内膜炎があると、子宮内膜がイチゴの外表様に発赤する(strawbery aspect)、直径1~2mmの小型の内膜ポリープ(マイクロポリープ)(図1)といった所見がこの検査で観察されます。
子宮鏡検査を外来で行い、検査施行後画像を説明させていただき帰宅となります。
②子宮内膜検査
子宮内膜を採取して子宮内膜を採取してその組織を検査する方法です。子宮内膜の組織内に形質細胞という塞翁を複数認めると慢性子宮内膜炎と診断されるため、形質細胞にあるCD138 という物質を特定する方法(免疫染色)を行うことで検査します。
外来にて子宮内膜を採取します。検査時期は月経終了後~排卵日前後で行います。
料金(税別、追加検査・処方などがある場合この費用と異なる場合があります。)
①子宮鏡検査・・・術前検査:約4,000円、検査当日:約3,000円
②慢性子宮内膜炎検査・・・12,000円
治療方法
慢性子宮内膜炎を認めた場合には抗生剤を2週間内服していただきます。初回の抗生剤での治癒率は80%程度とされますが、改善しない場合には追加の抗生剤治療が必要になります。
ERA®(子宮内膜着床能検査)について
ERA®とは
反復着床障害(体外受精において良好な受精卵(胚)を複数回移植しても妊娠が成立しない)があるとき、その原因が「着床ウインドウ(着床の窓)のずれ」である場合があります。
子宮内膜が胚の着床を受け入れる期間は月経周期の中で限られており、この期間のことを「着床ウインドウ(着床の窓)」といいます。この「ウインドウ」が開いている期間に胚が移植されると着床が起こりやすく、逆に開いていない期間に胚移植しても妊娠は成立せずこのようなケースのことを「着床ウインドウがずれている」といいます。
ERA®(子宮内膜着床能検査)とは、この子宮内膜の着床ウインドウを個別化して調べて、着床しやすい移植のタイミングを決める検査のことです。現時点で着床ウインドウについて検査出来る唯一の方法となります。
ERA®検査を実施して個別化した胚移植をした場合、妊娠率が約25%上昇したという報告(Igenomix社発表)や、ERA®を行った凍結融解胚移植88症例で胚移植を個別化しておこなった場合には着床率(73.7 vs. 54.2%)および 臨床的妊娠率 (63.2 vs. 41.7%)がいずれも高率であったという報告があります 1)
1)Tan J et al. The role of ERA in patients who have failed euploid embryo transfers. J Assist Reprod Genet. 2018 Apr;35(4):683-692.より
検査方法
ERA®はホルモン補充周期で体内の黄体ホルモン(プロゲステロン)が上昇した後に子宮内膜を採取するという検査方法になります。
具体的には以下がその方法です。
1)エストロゲン(エストラーナやプレマリンなど)の投与を開始する。
2)子宮内膜が7mm以上になったことを確認後、プロゲステロン(ルテウム、ワンクリノン、ルティナス、ウトロゲスタンなど)の投与を開始する。
3)5日間(約120時間)プロゲステロン投与を行った後、プロゲステロン投与5日後に子宮内膜を採取する。(例:水曜日にプロゲステロン投与開始→翌週の月曜日に子宮内膜採取)
検査結果およびその後の治療
検査結していただくと①Receptive(受容期)、②Pre-Receptive(受容期前)か③Non Receptive(非受容期)のいずれかが判明します。
この結果に応じて次回の移植スケジュール再検討します。③の場合には再検査が必要になります。
検査当日費用(税別、検査当日検体採取料・検体郵送料込み)
初回:100,000円
再検査:70,000円、再々検査:20,000円
PFC-FD療法について
PFC-FD療法とは
- PRP(Platelet-rich plasma:多血小板血漿)とは自分の血液内の血小板成分を濃縮して得られる物質で、このPRPを体に戻し、ケガや病気の治療を行う方法をPRP療法と呼ばれます。
- PFC-FDはPRPに含まれる成長因子という物質を濃縮して成分を高めた製剤で、PRPと同等の治療効果が期待できます。
- PFC-FDを子宮内に注入する(PFC-FD療法)と、子宮内膜が厚くなったり、胚移植の成功率が向上するという報告があります。
具体的には・ホルモン補充周期下で解凍胚移植を予定し、周期13日目で内膜厚が7mm未満であった83名例に対しエストロゲン投与を増量した後、PRP投与群(40名)と非投与群(43名)に分けて比較したところPRP投与群で有意に内膜が厚くなり(8.67 ± 0.64 vs 8.04 ± 0.27mm)、着床率および移植あたりの臨床的妊娠率が向上した(21% vs 9.37%、 39.4% vs 18.2%)1)といった報告があります。
1)Eftekhar M et.al.Can autologous platelet rich plasma expand endometrial thickness and improve pregnancy rate during frozen-thawed embryo transfer cycle? A randomized clinical trial.Taiwan J Obstet Gynecol. 2018 Dec;57(6):810-813.
- PFC-FDの卵巣への注入により卵巣機能不全を改善するという報告もあります
PFC-FDに含まれる主な成長因子
PDGF-a/b | 血小板由来増殖因子 | 血管新生や細胞増殖を促進する |
---|---|---|
TGF-β | 形質転換成長因子 | 線維芽細胞やコラーゲン合成を促進する |
bFGF | 線維芽細胞増殖因子 | 線維芽細胞の増殖と血管新生を促進する |
VEGF | 血管内皮細胞増殖因子 | 血管内皮細胞の増殖や血管新生を促進する |
EGF | 上皮細胞増殖因子 | 他成長因子の効果を増強させる |
PFC-FD療法がお勧めできる方
- 子宮内膜が薄い胚移植予定の方
- 反復着床不全の方(特に子宮内膜が薄い場合)
- 卵巣機能不全の方
治療方法(子宮内注入の場合)
①事前に採血(約50ml)して、検体を検査会社に郵送し作成されたPFC-FD製剤がクリニックに返送されます。作成には約3週間かかります。
②月経周期の約10日目と12日目に融解したPFC-FD製剤を子宮内に注入します。
③通常の方法と同様に胚移植をおこないます。
費用(2回の子宮内注入費用を含む 税別)
150,000円
高濃度ヒアルロン酸含有培養液(エンブリオグルー®)について
- 高濃度ヒアルロン酸含有培養液(エンブリオグルー®)は、着床率を高める効果がある培養液とされていて、培養液に含まれるヒアルロン酸が細胞同士の接着を促したり、新しい血管をつくったりという作用が着床率を上昇させるメカニズムと言われています。
- 具体的な報告には
17の研究における3898症例での検討で、ヒアルロン酸培養液使用により14の研究で臨床的妊娠率が1.39倍(オッズ比)に、6つの研究で出産率が1.41倍となった。多胎妊娠率も1.86倍に上昇したが、使用による副作用等の有害事象は認めなかった1) といったものがあります。
1)Stephan Bontekoe,et al:Adherence compounds in embryo transfer media for assisted reproductive technologies:summary of a Cochrane review. Fertil Steril 2015;103:Issue 6:1416-1417.
- 使用方法は胚をこの培養液に入れてから移植するという方法で、移植は通常のやり方と変わりありません。
高濃度ヒアルロン酸含有培養液がお勧めできる方
- 過去の移植が不成功であった方
(初回移植の方には基本的にお勧めしません。)
費用
保険適応の場合:3,000円
自費の場合:9,100円(税別)
高度精子精液機能検査(DFI・ORP検査)について
高度精子精液機能検査(DFI・ORP検査)とは
一般精液検査では精子機能を十分に反映できていない可能性があります。例えば通常の精液検査で異常がない方でも、精子DNAの損傷や酸化ストレスを受けている場合には受精率や妊娠率が低くなったり、流産率が高くなったりすることが報告されています。
このため精子DNAの損傷の割合(DFI検査)や、酸化ストレス度(ORP検査)を測定することによって男性側の隠れたリスク因子を特定できる可能性があります。
検査をお勧めできる方
- 体外受精を繰り返しても妊娠に至らない方
- 3日齢以降の胚発育が不良で胚盤胞に到達しない方
- 流産を繰り返してしまうカップルの男性
- 精液検査の結果が不良でその原因が見当たらない男性
結果による治療方針
DNA損傷や酸化ストレスの割合が高い場合には、「生活習慣改善の必要性」、「抗酸化サプリメントの服用」、「精索静脈瘤手術の必要性」、「体外受精へのステップアップの必要性」などの検討や、治療方針の見直しが可能になります。
検査方法
通常の精液検査と同様で採取した精液を提出していただきます。(要予約) ※当院でお渡しした専用の検査容器を使用していただき、採取より2時間以内での提出をお願いしております。
費用
DFI検査:10,000円
DFI+ORP検査:14,000円