不妊治療
不妊症について
不妊症とは
一定期間避妊することなく性交渉を行っているにも関わらず、妊娠が成立しない場合を不妊症と言います。現在6組に1組のご夫婦が不妊症であると言われ、近年増加傾向にあります。
不妊症の分類
原発性不妊:過去に一度もご妊娠をされたことがない。
続発性不妊:過去にご妊娠されたことがある方が、その後ご妊娠されない状態の事。
また、不妊の原因が夫にある場合を男性不妊、妻に原因がある場合を女性不妊と分類されており、不妊の原因が明らかな場合を器質的不妊、原因不明の場合は機能性不妊と分類されています。
不妊の原因
さまざまな報告がありますが、不妊原因の40%が女性、25%が男性、男女共に原因があるが25%程度であるとされています。(図1)
男女別の不妊原因
男女別の不妊原因としては、以下のようなものが考えられています。(図2)
女性
- 卵管の問題(卵管因子):卵管がつまっている、狭い、卵管が骨盤のまわりと癒着している。クラミジア感染などが原因となります。
- 排卵の問題(排卵因子):排卵がうまくいかない。排卵が不規則で安定していない。
- 子宮・子宮頚管の問題(子宮因子):子宮筋腫、子宮内膜ポリープ、子宮の形の異常、頸管粘液が少ない、など。
- 免疫の問題:精子を攻撃する物質である抗精子抗体が体内に存在している。
- 原因不明:検査をしても原因がはっきりしない。
ただし、いわゆる卵子の老化などはっきりと証明ができないものも原因不明として分類されます。
男性
- 精子の数や運動性などの異常:乏精子症、精子無力症など。造精機能障害といわれます。
- 精子の通路の異常:閉塞性無精子症
- 性機能の問題:勃起不全(erectile dysfunction :ED)、射精障害(ejaculatory dysfunction : EjD)など。
女性側の原因としては卵管や排卵の問題が、男性側では精子の数や運動性などが異常を示す造精機能障害が多いと言われています。
どのような点が不妊の原因となっているかを早い段階で知るために、卵管造影検査、ホルモン検査や精液検査などを中心に進め、その結果を受けて治療を進めてまいります。
不妊検査について
当院では以下のような検査を中心に不妊検査を進めていきます。
基本検査
1.基礎体温測定
基礎体温測定は
- 排卵がうまくいっているかどうか
- 排卵前なのか、排卵後なのか
- 排卵後のホルモンが分泌されているかどうか
- 妊娠している可能性はあるのかどうか
- 月経の異常がないか
といった患者さんの状態を確認させていただく上で、重要な役割を果たします。当院では治療されている患者みなさんに、基礎体温測定をお願いしており、診療前に必ず一度基礎体温を確認してから、診療をおこなわせていただきます。
当院では初診時に基礎体温表をお渡ししています。
2.超音波検査
子宮(子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜ポリープ、子宮奇形等)や卵巣のう腫等、卵巣の異常の有無を確認したり、卵胞や子宮内膜の計測をします。
3.子宮卵管造影検査(または通水検査)
卵管は自然妊娠や一般不妊治療での妊娠にとって、大変重要です。また卵管の問題での不妊が女性の不妊原因で最も多いとの報告もあります。このため当院では、卵管造影を基本検査として重視しています。
当院の卵管造影検査の特徴として以下の3点があります。
①自動注入器を使用した検査・・・造影剤をゆっくり注入するため、造影剤を手で押して注入するより刺激が少なく、痛みがでづらい検査になっております。
②1日で終わる検査・・・造影剤注入後に、骨盤のなかでの造影剤の広がりをみるレントゲン撮影も当日(注入後約15分後)におこないますので、すべての検査が1日で終わります。
③デジタル方式のレントゲン検査・・・デジタル方式のレントゲンを採用しておりますので、通常のレントゲン撮影よりも低い被爆量で撮影が出来ます。
※卵管造影検査のみご希望での受診も受け付けております。詳しい内容は初診説明時におこなわせていただきます。(※甲状腺ホルモン検査、クラミジア検査は別途必要となります。また医師の診断結果によっては、卵管造影をおこなえないと判断させていただく場合もありますのでご了承ください。)
※造影剤アレルギーがあるなど、造影検査が困難と判断される場合には通水検査を予定させていただきます。
4.ホルモン検査
妊娠にとって必要とされるホルモンをチェックし、治療の方針を決める重要な情報と致します。
<チェックするホルモンの1例>
- 卵巣の機能を示すホルモン(FSH、LH、エストラジオール、プロゲステロンなど)
- 卵巣のなかの残りの卵子数の指標となるホルモン
(抗ミューラー管ホルモン:AMH、自費検査)
※抗ミューラー管ホルモンについて
抗ミューラー管ホルモンとは卵巣機能の予備力(卵巣予備能)を判定する上で重要なホルモンです。卵子を育てる袋(卵胞)には、もととなる原始卵胞というものがあり、生まれた時にはこの原始卵胞が200万個程度ありますが、生殖年齢には10万~30万個にまで減少し、その後1か月に約1000個ずつ減少します。抗ミューラー管ホルモンはこの原始卵胞の数を示す指標であるため、年齢と共に平均値は減少しますが(図3)、年齢が若くても値が低い場合もあり、こういった場合治療のステップを早めに上げていく必要があります。このように治療をどのように進めていくかの指標となる重要なホルモンです。
- 卵巣の機能を抑制するホルモン(プロラクチンなど)
- 男性ホルモン(テストステロンなど)
- 甲状腺機能を示すホルモン(フリーT3,T4、TSH)
- 糖の代謝を調節するホルモン(インスリン)
5.精液検査
男性側に不妊の原因があることも多いため、初診後なるべく早い段階で精液検査をうけていただくことをお勧めしています。
検査のタイミングとしては2~7日間の禁欲期間後に検査を行う事が望ましいと言われていますが、必ずしもこの期間後でないと検査できないわけではありません。
精液検査は事前に検査専用の容器をお渡ししますので奥様が持参されても、院内で採取していただいても結構です。検査は事前に予約いただくことも、また当日午前中に直接持参していただくことも可能です。
また精液検査結果は、一度の結果では評価が難しい場合も多いため、1回目の検査の後、1か月後程度のタイミングで2回目の検査をお勧めする場合もありますので、あらかじめご了承ください。
その他の検査
1.クラミジア検査
卵管が原因の不妊症のうち、60%以上はクラミジア感染が原因とされています。また流産や早産の原因となる可能性や出産時の産道感染もあるといわれています。このため採血でクラミジアの感染が疑われた場合には、抗生物質での治療をおこない、その後治癒したかどうか確認します。
2.ヒューナーテスト(性交後検査)、子宮頸管粘液検査
排卵期のおりもの(頸管粘液)の状態を調べたり、粘液に入っている運動精子数や運動性を調べます。頸管粘液の分泌不足がないか、精子と頸管粘液の相性(適合性)に問題はないかなどを調べます。
3.抗精子抗体(自費検査)
抗精子抗体とは精子の運動性を低下させてしまう抗体で、精子が子宮の中を通過したり、卵子と受精することを障害するとされています。男女とも不妊症患者さんに一定の割合で抗精子抗体が検出されると報告されています。抗体が検出された場合、人工授精または体外受精による治療が勧められるため、治療方針を決定する上で重要な検査になります。
4.ソノヒステログラフィー
子宮のなかのポリープなどが疑われる場合に、子宮のなかに細いチューブを入れて、水を注入した後に超音波検査をすることで、子宮の中の状態を確認します。
5.妊娠前検査
当院は妊娠だけを目的とはしていません。無事患者さんが出産に至っていただくことを目的としています。このため妊娠前に健康状態に異常がないかどうか、下記のような事項を確認して治療にあたらせていただきます。場合によってはまず他の疾患を治療した後に、不妊治療をお勧めさせていただく事があります。
- 問診(既往歴・合併症・手術歴・内服薬などの確認)
- 子宮がん検診
- 乳がん検診
- 身長・体重測定(BMI計測)
*BMI=体重(kg)÷身長(m)2 :BMIが25以下であることが不妊治療前には理想とされています。 - 貧血・肝機能・腎機能などの採血
- 風疹抗体採血(ご夫婦ともに)
- 血液型(ABO型、Rh型)
必要に応じて行う検査
1.腹腔鏡検査・手術(総合病院へのご紹介)
- 一般不妊治療で妊娠成立しないが、体外受精のご希望がない場合
- 卵巣のう腫や子宮筋腫などが妊娠のさまたげになっている、またはこれらの治療を優先した方が適切と判断される場合
は腹腔鏡治療という選択肢があります。この場合、治療可能な高次施設へご紹介させていただきます。
2.男性採血検査
- 精液検査結果などにより、必要に応じてホルモン(LH,FSH,PRL,テストステロン)、クラミジア抗体・抗原、抗精子抗体検査をお勧めします。
これらの検査結果をもとに、個別の患者さんごとに適していると考えられる治療法を提示させていただきます。
不妊治療の方法
不妊治療には大きく分けて
①タイミング療法
②人工授精
③体外受精
の3通りの治療方法があります。
一般的な「ステップアップ」という考え方では①→②→③という順で治療を進めていきますが、当院では患者さんの
- 受診までの治療歴
- 当院での検査結果
- ご年齢
などを総合的に判断し、どの治療法から開始しどのように治療を進めていくべきかを決定します
①タイミング療法について
- 患者さんの月経周期
- 超音波による卵胞・子宮内膜の計測
- 尿中ホルモン(尿中LH)の確認
などをもとに、排卵日を推定してタイミングの指導を致します。(卵胞チェック→排卵確認の流れ >>)
②人工授精について
人工授精がすすめられる場合
- 精子の数が少ない、運動率が悪い
- ヒューナーテスト(性交後検査)の結果が悪い
- 射精障害・性交障害がある
- 機能性不妊(タイミング療法を一定期間行っても妊娠に至らない場合)
などの場合に人工授精がすすめられます。
人工授精実施のタイミング
- 尿中LH陽性の翌日もしくは当日
- 点鼻薬や注射薬で排卵をうながした翌々日もしくは翌日
などが主な人工授精のタイミングとなります。
当院では精液の取り違え防止のため、同一時間に精液の持ち込みが重ならないよう、人工授精を事前予約とさせていただいております。人工授精前日までにご予約いただくか、当日の場合には電話にてご連絡しご予約をお願いいたします。また2次元コードによる取り違え防止システムも併用し、徹底的に取り違えを防止しております。
人工授精のながれ
①事前準備・・・事前にご主人の感染症の有無について、血液検査を受けていただいております。(項目:B型肝炎、C型肝炎、梅毒、HIV)
②精液の採取・・・ご自宅またはクリニック内の採精室にて、精液専用の滅菌済み容器に、精液を採取していただきます。
③精液の処理・・・なるべく良好な運動精子を集め、かつ精液中の不要な成分を取り除くため、精液を専用フィルターでろ過した後に、密度勾配遠心法といわれる方法で処理した注入しております。精液を処理するのに、およそ1時間かかりますのでご了承ください。
④人工授精実施・・・普段使用する内診台で、人工授精専用のカテーテルを用いて、子宮内に処理後の精子を注入します。注入後内診台でしばらくお休みいただき、そのまま帰宅となります。
⑤人工授精後・・・人工授精後の感染はごくまれですが、念のため感染予防の抗生剤を内服していただきます。帰宅後の生活は普段通りで構いません。
人工授精で妊娠される方の9割前後は、5.6回目までの施行で妊娠されており、この回数が人工授精を続けるひとつの目安と考えております。ただし、その方のご年齢や治療歴などによっては回数に関わらず、体外受精へ進むことをお勧めする場合もあります。
③体外受精について
体外受精とは経腟的に卵子を体外に取り出し、体外で精子と受精させた卵子(胚)を子宮内に移植する一連の方法を指します。(→体外受精のながれへ)
体外受精がすすめられる場合
日本産科婦人科学会の見解に従い、原則的に体外受精はこれ以外の治療によっては妊娠の可能性が低いと判断される方にお勧めいたしますが、一方で高年齢の女性やAMHが非常に低い方などは、加齢に伴う卵巣機能の低下などを考慮して、いたずらに無効な治療を繰り返すことなく体外受精胚移植を実施する必要があると考えております。
具体的に体外受精がすすめられる方は
1)卵管の問題がある。(卵管因子)
2)男性不妊症
精子数が少なかったり(乏精子症)、精子の運動性が不良(精子無力症)な場合など。
3)子宮内膜症
重症の子宮内膜症で、人工授精などを行っても妊娠に至らない場合。
4)免疫性不妊症
抗精子抗体(精子の運動性を低下させたり、受精する能力を低下させる抗体)があり、妊娠が成立しない場合。
5)長期の原因不明の難治性不妊
様々な不妊症検査にもかかわらず原因が特定できない場合や、従来の不妊治療を繰り返し行っても妊娠が成立しない場合。(35歳あるいは37歳を超えるような原因不明不妊の場合、漫然とステップアップするのではなく、適切なタイミングで体外受精を提案することが重要とされています。(生殖医学会:生殖医療の必修知識 2014年版より)
などの場合です。
体外受精のながれ
体外受精の流れは
- ①卵巣をお薬で刺激する(排卵誘発)、もしくは自然の卵子の発育を確認する(自然周期)
- ②卵子を体外に取り出す(採卵)
- ③卵子と精子をかけ合わせる(媒精または顕微授精)
- ④受精を確認し、受精した卵子(胚)を培養する
- ⑤胚を凍結するまたは胚を移植する
という大きく5段階に分けることができます。
① 卵巣をお薬で刺激する(排卵誘発)、もしくは自然の卵子の発育を確認する(自然周期)
採卵に至るまでの卵巣刺激方法は
- 自然周期:薬剤による排卵誘発を一切行わず、完全な自然周期で行う方法。
- マイルドな刺激:経口の排卵誘発剤をベースにして、卵胞発育の状態により、必要に応じて排卵誘発剤の注射を追加する方法。
- 連日の注射による刺激:排卵誘発剤の注射を連日行い1回の採卵で多数の卵子を採取する方法。
があります。
それぞれの治療法のメリット・デメリットについては以下のようなものがあります。
卵巣刺激法別のメリット・デメリット
- 自然周期
- 治療に伴う副作用が少ない。
- 毎周期でも採卵が可能。
- 採卵前の排卵により採卵がキャンセルになることがある。
- 採卵数が多くの場合1個だけなので、胚移植まで至らないことも多い。
- 胚移植に至れば、妊娠成績は良好だが、採卵1周期あたりの妊娠率はB,Cより低い。
- マイルドな刺激
- 卵巣への作用がマイルドで副作用が少ない。
- 5,6個以上採卵できた場合にはCに匹敵する妊娠率が得られる。
- 状態によっては連続周期でも採卵が可能。
- Cに比較して1周期あたりの治療費が安い。
- まれに、採卵前の排卵により採卵がキャンセルになることがある。
- Cに比して、胚移植のキャンセル率がやや高い。
- 連日の注射による刺激
- 1回の採卵で多数の卵子を採取できるので、胚移植のキャンセル率が低く、安定的に良好な妊娠率を出すことができる。
- 排卵誘発剤による卵巣過剰刺激症候群を発症する可能性がある。
- 使用する薬剤量が多く、治療費がかさむ。
- 回数が重なると排卵誘発剤が効きにくくなる。ケースがあり、1回行うと、連続の実施は困難で通常2周期は空ける必要がある。
卵巣刺激法別のメリット・デメリット
C法やB法でメリットが大きい患者様が多く、この2つのやり方のいずれかを選択することが多くなっています。(図)
② 卵子を体外に取り出す(採卵)
採卵は原則的に麻酔をした上で実施します。
主な麻酔方法は、以下の2つの方法です。
- 採卵前に鎮痛剤の坐薬を入れた上で、針を刺す部位に局所麻酔薬を注射して麻酔する。
- 点滴をした上で、軽い静脈麻酔を行う
(卵胞が1個のみの場合は、鎮痛剤の坐薬のみで採卵することもあります。)
当院では、朝採卵し、しばらく安静にしていただいた後、帰宅していただいております。
③ 卵子と精子をかけ合わせる(媒精もしくは顕微授精)
卵子と精子をかけ合わせる方法は
- 体外受精=IVF (卵子に精子をふりかけてあげる方法=媒精)
- 顕微授精=ICSI (卵子に専用の針を刺して精子を1つだけ注入する方法)
の2つがあります。
体外受精(IVF)
採卵して得られた卵子に、調整した運動率良好な精子をディッシュの中で媒精します。
媒精とは、精子と卵子をディッシュの中で混ぜ合わせてあげる方法です。
精子が自分の力で卵子の細胞質内に辿り着くため、自然に近い受精の仕方になります。
顕微授精(ICSI)
体外受精を繰り返しても受精しない方、透明帯が硬くて厚い方、精子の濃度が低い方などに顕微鏡下で、ガラスのピペットを用いて、精子を卵子の細胞質内に注入する方法です。顕微鏡下で精子を細胞質内に注入するには、卵子の回りにある顆粒膜細胞を取り除いてあげる必用があり、その後調整した良好な精子を卵子の細胞質内に注入します。
体外受精と顕微授精のメリット・デメリット
体外受精と顕微授精のメリット・デメリットは一般的に以下のようなものがあるとされています。
顕微授精(ICSI) | 体外受精(IVF) | |
---|---|---|
メリット | 受精率が高い | 自然に近い受精 |
デメリット | 人工的な受精 | 顕微授精より受精率が低い |
当院では個々の患者さんの状態に合わせて、どの方法を選択するか相談の上決定致します。
また2つの方法の良い点を組み合わせることを目的に、体外受精と顕微授精を同時に行う方法(split法)も選択することが出来ます。
④ 受精を確認し、受精した卵子(胚)を培養する
卵子は採卵時、顆粒膜細胞と呼ばれる細胞と透明帯に包まれています。体外受精の場合はとれたままの卵子に、調整した精子を媒精(精子を卵子の近くにふりかける方法)を行います。
顕微授精の場合は、顆粒膜細胞を取り除いて、直接精子を卵子の細胞質内に注入します。ここまでを採卵当日に行い、採卵の翌日に受精確認を行います。受精確認では前核と呼ばれる核が2個見える事を確認し、これが確認できた胚について培養を続けます。
受精した卵子(胚)を培養した場合には、胚の成長の評価を行います。(グレード)胚のグレードは絶対的なものではありませんが、一般的にはグレードの高い胚(良好胚)は低い胚(不良胚)に比べて妊娠率が高いとされています。
胚のグレード初期胚でのグレードは、グレード1が1番よく、グレードが下がるに従って不良となっていきます。胚盤胞では初期胚と異なる評価の方法を行ない、どの発生段階でもAAが1番良くCCが不良胚の評価になります。
⑤ 胚を凍結するまたは胚を移植する
受精した卵子(胚)を移植する方法として
- 採卵した周期に移植を行う(新鮮胚移植)
- 一旦凍結し、次周期以降に移植する(凍結融解胚移植)
の2通りがあります。
胚の凍結について
- 近年の凍結技術の向上となどをうけ、全胚凍結を行い子宮内環境を整えた後に胚移植をすることで高い妊娠率が得られるという報告が全国的に多く見られています。2014年の日本産科婦人科学会の報告では、凍結胚による出生児数(3万6374児)は体外受精での全出生児数(4万7322児)の76.8%を占めるまでに至っています。
- このため当院でも基本的には採卵周期にはいったん凍結を行い、次周期以降で解凍胚移植を行うことを中心に考えています。もちろん個々の患者さんの状態やご希望にあわせて、採卵周期での移植(新鮮胚移植)も行います。
また採卵周期の排卵誘発により、卵巣が腫れてしまったり、子宮の内膜が薄いなどといった移植に適さない周期であった場合に関しては、より胚凍結がおすすめになります。 - 凍結により透明帯という卵子の周囲の組織がが硬化するとされるため、解凍する際にはアシステッドハッチングすることをお勧めします。
- ただ一方でグレードが低い胚ほど凍結や融解に胚が耐える事ができず、退行や変性が起こり易くなります。そのため、全ての胚が凍結、融解可能なわけではありません。
凍結・融解胚移植のメリット・デメリット
メリット |
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---|---|
デメリット |
|
アシステッド・ハッチング(AH:Assisted Hatching)について
受精卵が子宮内膜に着床するためには、胎児になる細胞(内細胞塊)と胎盤になる細胞(栄養外胚葉)が透明帯を突き破って出てこなくてはなりません。しかし、胚の凍結により透明帯が硬化したり、透明帯が厚い、硬いなどの質的異常があると、透明帯を突き破る事が難しくなり、着床の妨げになってしまいます。AHはそのような状態に対して透明帯の一部に小切開を加え、着床しやすい状況になるよう補助してあげる方法です。
AHには3つの方法があります。当院ではPZD法を行っています。PZD法は、ガラスのピペットで透明帯を開孔するため、化学薬品を使用したり、レーザーで細胞を傷つけたりする恐れもなく拡張胚盤胞にも適応できます。
⑥その他の方法
胚盤胞凍結を行った場合には、シート法という治療法を選択することも可能です。
シート法について
胚盤胞まで発育した胚の培養液中には、胚から分泌された子宮内膜に着床しやすくなる物質が含まれているのではないかと考えられています。
シート法とは、この考えをもとに
- ①受精卵が胚盤胞にまで培養可能であった場合、その胚を培養していた培養液を凍結する。
- ②凍結胚盤胞を解凍移植する時に、移植の2-3日前に凍結保存しておいた培養液を融解して子宮内に注入し、その後凍結胚盤胞を融解胚移植する。
という2つのステップで進める方法です。